知ってもらうことの大切さ、伝わる想い
MECP2重複症候群は出生男児10万人に1人という希少疾患であるがゆえ、医療従事者の中でもあまり知られていなかった疾患です。でも、2019年に小児慢性特定疾病に認定され、2021年にはMECP2重複症候群の遺伝子検査が保険収載、2024年4月には家族会の活動目標の一つでもあった指定難病にも登録されたことにより、以前よりも疾患名に対する医療現場での認知度は上がったように感じます。遺伝子検査が保険収載となったことで、診断される子も以前に比べとても増えています。
医療現場で認知度が上がることは治療方針等にも直結するため、入院の多いMECP2重複症候群の子どもたちにとってとても大きいことです。ただ、子どもたちのメインの生活の場は家で、学齢期の子であれば学校での生活が一番のウエイトを占めます。そして、子どもたちは学校が大好きです。日常生活の場で、MECP2重複症候群がどんな病気なのか、MECP2重複症候群の子どもたちはどんな子たちなのか、それを知ってもらうことが子どもたちだけではなく家族にとっても、日々の生活のしやすさに繋がるのではないかと思っています。
「ボクたちを知ってください!」をテーマに、家族会として企業や大学、高校や中学校でも話をさせていただいています。それに加えて、家族会メンバーそれぞれがそれぞれの地域でMECP2重複症候群を知ってもらうため、様々な形で紹介をしてくれています。
今回はその一例を紹介しようと思います。
5年間の積み重ね
かなでは地域の小学校に通う6年生です。支援級に在籍していますが、朝の登校も通常級、いくつかの教科を除き、ほとんどの時間をクラスメイトと過ごしています。進行性の疾患のため、学年が上がるごとにしんどい日が増えていくようになりました。1年生の頃は支援級で過ごす時間はほとんどなかったのに、今はしんどさが増し支援級で過ごすことの方が増えてしまいました。学校に行けない日も増えてきました。それでもかなでは学校が大好きです。朝どんなにしんどくても、車椅子を見て学校に行きたいことを伝えてくれます。
かなでの疾患について、クラスの子たちに毎年話をしています。MECP2重複症候群がどんな病気なのか、全国に何人くらいいるのか、何故かなでが1年生の頃と今とで変わってしまったのか、学年が上がるごとに子どもたちの視野も広がっているので、それに合わせて6年生の今年はMECP2重複症候群を全国的に見た時の患者数の割合の話などもすると、みんなとても興味を持って聞いてくれました。かなでの同級生たちは、2年生の時に治療研究資金を得るためペットボトルのキャップ集めにも協力してくれています。なので、今年から始まる患者対象の治験についても簡単に話をしました。
「MECP2重複症候群は治ると思う人?」
という問いかけに「治る」ではなく「治ってほしい!!」と次々に声を上げてくれた子たちに、言葉のチョイスがさすが6年生だなと思ったと同時にとても温かい気持ちになりました。毎年話をしてきて良かったと改めて思いました。
子どもたちの中には、話を聞いた後にタブレットで独自にMECP2重複症候群を調べてくれた子がいたり、かなでにたくさん話しかけに来てくれた子がいたりしたそうです。家に帰りご家族にMECP2重複症候群について話をしてくれた子もいたようです。それを聞いただけでも興味を持ってくれたことに対してとても嬉しかったのですが、その中で家族会のHPを見つけ、支援したいと啓発グッズをご購入くださったご家族がいました。家族に話をしてくれた子は、2年生の時に始めて一緒のクラスになり、かなでのことを色々気に掛けてくれたり、話しかけに来てくれたりする様子が当時から印象的でした。
今回その子とご家族に許可をいただき、簡単なインタビューをさせてもらいました。思春期真っ只中の小6男子がどう答えてくれるのかちょっとドキドキしましたが「かなでの話を聞いてどう思った?」という質問に「もっと仲良くなりたいと思った」と答えてくれました。予想外の答えで、なるほど、これが1年生の時からずっと同じ学年にいる、同じクラスで過ごした子どもたちの反応なのかと5年間の子ども同士の時間の積み重ねを感じました。子どもたちは、疾患を見ているのではなく、クラスメイトの「かなで」をみてくれているのだと、一番大切な部分を思い出させてもらった気持ちです。
これからも温かいみんなと一緒にいたいなぁ。